筑後川 鱸(シーバス) 研究

 Season:Spring ( 03月 〜 05月 )

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筑後川における「春」は、いつも非常に移り気で一番難しい時期です。

いつものことながら、有明鱸(シーバス)は効率よく捕食できるベイトをコロコロ変えながら、

他の季節よりも大きな回遊を行うようです。

大潮で最大5mを越える潮汐差を利用すれば、河口から23kmの筑後大堰から有明海まで移動することは

有明鱸(シーバス)にとっては難しいことではなく、単に流れに身を任せてサスペンドするだけで広域の移動が可能なのです。

過去には、鰭も動かさずサスペンドして移動している大型の有明鱸の群れを実際に筑後大堰直下で目視で確認しています。


有明海沿岸のロックフィッシュ調査を月1〜2回おこなっていて思うことですが、

筑後川での冬季のバチの発生が一段落すると、時期がズレて春に有明海でバチ抜けが起きているように思います。

この有明海の自然の周期が有明鱸のDNAに刻まれており、比較的容易に捕食できるベイトを求めて有明海と筑後川など

大きな回遊をおこなっていても何ら不思議ではないと考えています。

そして、溯上をはじめた有明鱸(シーバス)は筑後川水系の中小河川に紛れ込み、思わぬ釣果をあげることがあります。

「筑後川」とは違いますので詳しくここでは語りませんが、「関平江川」「切通川」「山ノ井川」「田手川」「城原川」「佐賀江川」など

筑後川水系の代表的な中小河川にはベイトについて有明鱸(シーバス)が溯上します。

さながら、まるでクリークなのですが、潮汐の影響を受けている中小河川では溯上の可能性があり、

春にベイトについて中小河川に入り込み、夏の高水温期には筑後川本流や有明海に下り、

秋にベイトについてまた入り込むような傾向にあるようです。


筑後川のアフタースポーンの個体についてなのですが、

筑後川において有明鱸(シーバス)の溯上の第一波は冬にすでに終了しています。

実釣の結果からも、冬の大型の個体がほとんどアフタースポーンの痩せた個体であるのに対して、

春の有明鱸(シーバス)はアフタースポーンの個体は半分以下になります。

したがって、春は概ね、アフタースポーンは越えてかなり回復基調の個体となります。



早春の筑後川の風物詩であるシラスウナギ漁を筆頭に

稚鮎の溯上がはじまると、手長海老など甲殻類が姿を見せ始めます。

その中でも比較的容易に捕食しているものは、

通年を通して鱸の胃の内容物から検出される甲殻類だと考えています。

シラスウナギ漁は毎年1月15日から4月15日までです。

シラスウナギが上げ潮にのって溯上してくるために、

上げ潮で漁をされていることが圧倒的に多いようですが、

毎年3月いっぱいでシラスウナギの溯上は見られなくなるようです。


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筑後川のシラスウナギ漁 ( 漁期 1/15 〜 4/15 )


筑後川の有明鱸(シーバス)は

「バチ」「甲殻類」「シラスウナギ」「稚鮎」「イナっ子(鯔の稚魚)」「鮒」など

のベイトを捕食しながら、有明海沿岸を含めた大きな回遊をおこない

筑後川へ入ったり抜けたりを繰り返しているように考えています。

そして、そのうちに、「クルメサヨリ」の溯上がはじまると

その「クルメサヨリ」について本格的にそして安定的に

再度、有明海から有明鱸(シーバス)の溯上がはじまります。

この頃には、「蟹」などが戻ってきて足元で見ることが

できるようになります。


筑後川河川敷の菜の花


汽水(潮の影響を受ける地域)かつ淡水域という

限られた地域に存在する絶滅危惧種であり

筑後川固有種の「アリアケヒメシラウオ」というベイトが

筑後川には存在します。

「アリアケヒメシラウオ」は産卵期が3〜5月といわれており、

全長が最大60mmの透明な魚体をしたシラウオのようです。

ルアーのフックにスレ掛りしてくる個体は30〜40mm程度が多く

アリアケヒメシラウオの上記産卵期に合わせるように

「これ」に付いて偏食している筑後川の有明鱸は

そのベイトサイズゆえに非常に手強いものとなります。


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筑後川固有種 アリアケヒメシラウオ


そして筑後川 有明鱸(シーバス)における最大の特徴的なファクターは、ずばり、「エツ」・・・!

このベイトなくして、筑後川 有明鱸(シーバス)は語れません。

「クルメサヨリ」の溯上の後に「エツ」の溯上があるのです。

筑後川における「エツ」の漁期は、毎年5月1日より7月20日まで。

筑後川の川幅いっぱいに張ったエツ漁の流し刺し網にルアーなどを引っ掛けるとルアーを紛失するだけでなく、

場合によってはロッドやリールの破損や引っ張られて自分自身が落水などする危険もありますので

くれぐれもキャストには気をつけるようにしてください。


日本国内では有明海固有種であるカタクチイワシ科の「エツ」は

筑後川に溯上するときには、遊泳力が弱く上中層をヒラヒラと泳ぐ20〜40cmの銀色のナイフ形の魚です。

その「エツ」が産卵のために筑後川へ溯上するトリガーが

塩分濃度が薄くなることであるために、雨が降って筑後川が増水することがエツ溯上の鍵となります。

毎年5月1日からがエツ漁の解禁ですが、それからの大雨後には確実に「エツ」の溯上がみられますので、

その「エツ」について確実に有明鱸(シーバス)も溯上してきます。

「エツ」の溯上にしたがって、有明鱸(シーバス)の釣果も安定してきます。

エツの溯上が見られるようになれば、ルアーは比較的何でもよく、

中層を中心に比較的上層での意識でヒットに持ち込めることが多くなります。


ちなみに筑後大堰下流域直下は淡水域ですので、

海水でフローティング使用でもその比重の違いで沈んでしまうフローティングミノーもありますので注意が必要です。

もちろんロット差はあるとは思いますが、具体的には・・・

「ima」    「裂波120」はシンキング・「裂波140」はフローティング
「ダイワ」  「R50LD」はシンキング
「DUO」   「SLD145F」に至ってはロットによってシンキングのものとフローティングのものが混在しています。


実際にフィールドにて使用ルアーをキャストする前に足元で浮かべて泳がして確認する必要があります。



これ以前の「Season Spring」(2008年05月更新分)の記述はこちら !



   
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